漫才「武士4」
二人:はいどうもー!オフ・コースです、よろしくお願いします。
藤井:早速ですが、俺ね昔の武士が好きなんですよ。
大賀:その言葉…本気か?
藤井:何で疑うんだよ!ただ好きだって言ってるだけだろ!
大賀:あぁ、ごめんごめん。「武士に二言はない」んだもんね。
藤井:なんで俺を武士だと思った!?間違える要素1つもないだろ!
大賀:で、武士の中で特に好きな人とかいるの?あ、もちろん「自分」はなしでね。
藤井:だから俺は武士じゃないって言ってるだろ!
まぁ一番好きなのは「織田信長」かな。
大賀:その言葉…鈍器か?
藤井:鈍器関係ねぇよ!
大賀:でもさぁ、信長ってなんか野蛮なイメージがあるよね。
藤井:まぁ信長の恐ろしさを象徴する「泣かぬなら」で始まる俳句が残っているくらいだしね。
大賀:あぁ、あったね。「泣かぬなら 困ってしまって ワンワンワン」
藤井:違うわ!何で犬のおまわりさんみたいになってるんだよ!しかも泣かなくて困るってどんな状況だ!
ほら、もっと怖さを強調する言葉が入ってたでしょ。
大賀:ああ。「泣かぬなら 置物プレステ 壷ハンマー」
藤井:お前鈍器大好きっ子だな!しかも1つだけ現代的なの混ざってるし!
そうじゃなくて、真ん中の部分はストレートに「殺してしまえ」が入ってただろ?
大賀:「泣かぬなら 殺してしまえ え?誰を?」
藤井:なんで俳句が会話調なんだよ!最後は「ホトトギス」だろ!これくらいは知っててくれよ!
大賀:でも俺、他の事については詳しいぜ。信長と言えば本能寺の変とか、楽市・楽座とか…。
藤井:なんだ、知ってることもあるんだ…
大賀:あとは、野球好きだとかかな。
藤井:待て待て!信長の時代に野球なんてないだろ!
大賀:でもさ、武士が野球で決闘してたら面白いと思わないか?
藤井:確かにちょっと面白そうだけど…。
大賀:『…謙信!今日こそお前からホームランを打ってやる!』
藤井:勝手に始めちゃったし。
大賀:『ふっ、信長ごときに打てるわけがなかろうが。』
藤井:決闘の相手は上杉謙信か。
大賀:『よし、謙信!まずはルールを教えてくれ!』
藤井:ルール知らないのかよ!最初の会話からして、知ってるものだと思うだろ!
大賀:『なになに、「ぼうる」というものを打って飛ばせばいいのか。』
藤井:素直に「ボール」って言えよ!「ルール」とか「ホームラン」とかはスムーズに言えてただろ!
大賀:『で、それを打つものは…あ、こんなところに長い棒があるぞ。』
藤井:「バット」は、もはや長い棒呼ばわりか!
大賀:『長い棒があるということは…そ、そうか!手で打つんだな!』
藤井:んなわけないだろ!何が「そ、そうか!」だよ!バットがあるんだからバットを活用しろよ!
大賀:バット、バッター、バッテスト?
藤井:英語の活用形のことじゃねぇよ!バットを利用しろってことだよ!
大賀:『よし、これで大まかなルールは分かったぞ。』
藤井:今ので分かったと言えるその自信はどこから来るんだよ。
大賀:『じゃあ、早速試合開始だ!』
藤井:あぁ、もうどうなっても知らんからね。
大賀:『…さぁ、始まりました。信長VS謙信の1戦。』
藤井:急にプロ野球中継みたいになったし!ってこれ誰が実況してるんだ?
大賀:『解説は小野妹子氏。実況はワタクシ、西郷隆盛でお送りします。』
藤井:世界観無茶苦茶だな!こいつら同じ時代に生きてちゃ駄目だろ!
大賀:『なお、今日は特別ルールと致しまして、マウンドが尾張の国、バッターボックスが越後の国でお送りしています。』
藤井:曖昧すぎるわ!なんで範囲が昔の国単位なんだよ!大体マウンドからバッターボックスまでどれくらいあるんだよ!
大賀:『百里です。』
藤井:遠すぎるわ!百里って約400kmだぞ!東京から大阪辺りまで行けちゃうんだよ!?
大賀:『…さぁ、早速謙信第1球投げました!』
藤井:俺の言葉は完全にスルーか!まぁ百里なんて届くわけが…
大賀:『…ストライク!』
藤井:百里の距離投げられちゃったよ!しかもストライクゾーンに入っちゃったよ!人類の歴史覆しちゃったよ!
大賀:『いやぁアウトローに決まる良いぼうるでしたねぇ。』
藤井:やっぱり「ぼうる」だけ浮いてるな!何でこの世界のやつらは「ボール」だけ言えないんだ!
大賀:『続いて第2球投げました!おおっと腕に当たりました!デッドボール!』
藤井:「ボール」って言えてるじゃん!何で頭にデッドが付いた時だけ言えるんだ!
大賀:『バッターはそのまま一塁がある八丈島へ島流しされます。』
藤井:一塁が遠すぎるわ!しかもバッターは球は当てられるわ、島流しされるわで踏んだり蹴ったりだな!
大賀:『さぁ気を取り直して…おーっとここで牽制球!ボールがそれました!ランナーは二塁がある北極へ向かいます!』
藤井:二塁はもはや国内ですらねぇのかよ!
大賀:『さぁランナーはそのまま二塁を蹴って、向かう先は「上は洪水、下は大火事。ここどーこだ?」』
藤井:最後なぞなぞじゃねぇか!結局三塁がお風呂ってどういう事だよ!
大賀:『おーっと。ここでランナーが球場を飛び出して行った!向かう先は…銭湯?』
藤井:そりゃそうだよね!三塁がお風呂なんだもんね!
大賀:『さぁ、ランナーが風呂上がりの牛乳を一気飲みしている間に解説の小野さんに伺おうと思います。』
藤井:急に武士が古き良きサラリーマンっぽくなっちゃったな!
大賀:『では、小野さん。世界三大美女に選ばれた事についてお願いします。』
藤井:三大美女に選ばれたのは小野小町の方だよ!第一小野妹子は男だろ!
大賀:『…えぇ。…はい。…それで?…その時のお気持ちは?』
藤井:普通に答えちゃってるし!それから小野妹子のマイクの電源も入れてあげて!
大賀:『…へぇそうなんですか。そうやって薩長同盟が結ばれたんですね。』
藤井:一瞬にして話題変わったな!大体お前西郷隆盛だろ!西郷隆盛が薩長同盟の事知らなかったらマズいだろ!
大賀:『…なるほど。…それは凄いですね。…あ、ようやくランナーが2リットルの牛乳を飲み終えたようです。』
藤井:2リットルも飲んでたのかよ!えらく時間がかかると思ったよ!
大賀:『三塁ランナーはお腹を押さえています!』
藤井:そりゃ2リットルも飲めばね!むしろよく飲みきったよ!
大賀:『実況席では解説者のイスと実況者のイスを使って2人でイス取りゲームが始まりました!』
藤井:何の報告してるんだよ!っていうかイス取りゲームでイスと人間の数一緒にしちゃ駄目だろ!
大賀:『さぁ、試合の方もイス取りゲームの方も緊張感を増してきました!』
藤井:だから試合の方に集中してあげて!
大賀:『ピッチャーがボール…あ、失礼しました。ぼうるを持って構えました!』
藤井:わざわざ言い直すな!今の「ボール」で合ってるんだよ!
大賀:『さぁ、ランナー三塁のチャンス。ここでバッターがホームランを打てば天下統一です!』
藤井:ホームランで天下統一できるだって!?どんなルールだよ!
大賀:『次のホームランで通算869号です!「王」を超えることが出来ます!』
藤井:それは、王は王でも貞治だ!もうやめやめ!全然まともな野球が出来てないじゃねぇか!
大賀:んー。やっぱり、対戦相手の謙信が武士じゃなかったのが問題だったかな。
藤井:はぁ何言ってるんだ!?謙信は武士だろ!?
大賀:だって「謙信」の字には『二つの"言"』が入ってるだろ。だから「武士に『二言』はない」ってね。
藤井:いい加減にしろ!
大賀:その言葉…本気か?
藤井:本気だよ!もういいよ!
大賀:はい、俺たちもちろん!
藤井:オフ・コース!
二人:どうもありがとうございました。